医師の働き方改革が始まるとどうなるのか:勤務医編
世の中で流行りの働き方改革。
労働時間短縮計画作成のガイドラインが発表され、いよいよ始まるな感が溢れていますが、実際どうなるのかよく分からない人も多いのではないでしょうか。
今回は、大学勤務医の働き方がどう変わるのか、見ていきましょう。
医師の働き方改革が始まるとどうなるのか:大学勤務医編
働き方改革の概要
資料:厚生労働省 医師の働き方改革の推進に関する検討会
中間とりまとめの公表について 中間資料より抜粋
一般的な労働基準法に基づく労働者の勤務時間が左の水色。
今回の改革で医師の労働時間制限の基本がA(それでも一般則より長い)。
大学病院はいろいろ難癖付けてC(黄色)になるんだと思われます。
C:集中的技能向上水準 とは……
- 研修医や高度技能を習得する医師は特例として時間外勤務時間の制限は最大1860時間とする。
- 時間外労働が月100時間を超える場合は、医師の面接指導と(時間を減らすなど)就業上の措置を義務付ける。
- 以下の追加的健康確保措置を義務づける。
- (1)連続勤務時間制限28時間
- (2)勤務間インターバル9時間
- (3)代償休息
ちなみに、いわゆる過労死ラインは時間外100時間/月、もしくは3-6ヶ月平均で80時間/月。
なんかもうやべえなって思うけど感覚が麻痺しているらしい。
どのくらい働くと時間外1860時間/年になるかというと
日勤の定時を8時間(+休憩1時間)×5日間 とすると
1日当直があれば約19時間分が時間外に相当
残り19時間÷4=約5時間/日の時間外労働 になる
つまり当直含めて7時~21時で働いていたら上限ギリギリ ということ
年間80日程度の休日・概ね4週6休に相当するらしい
もちろん外勤を含めた労働時間です。あれ、結構現実的?
追加的健康確保措置
さらに、以下の3点の厳守が求められます。
(1)連続勤務時間制限28時間
当直後の連続勤務の制限(直明けは帰る。外勤も不可。)
(2)勤務間インターバル9時間
睡眠時間の確保
(3)代償休息
休息時間中の呼び出し等による労働時間はその分の休息時間を確保
(1)、(2)に関する抜け穴が『宿日直許可』です。
宿日直許可とは、いわゆる寝当直のこと。
*許可基準について 詳細は検討会第1回参考資料3を参照
宿日直許可のある勤務時間帯は労働時間に該当しない
→つまり、勤務時間インターバルに含めることが可能になります。
簡単に言えば、宿日直許可が無ければ直明けは働けないけど、宿日直許可があれば翌日勤務ができる、ということです。
具体的な運用については検討会資料1を参照してください。
実際どのくらい働けないのか
架空の医局で連続勤務時間28時間制限が急に始まるとどうなるのか見てみました。実際は医局員もうちょっといると思うので、自院の当直はその分減ると思いますが……
当直の翌日は休みなので、土日に外病院の当直へ行ったりすると月曜日に働けない人が出てきます。
毎日誰かしら休みですし、15時間を超えるような長時間手術がある場合には翌日ごっそり抜けてしまいますね。
この中で通常の手術と外来を今まで通りこなすのはなかなか難しいかも。
さらに、大学勤務医だと地方病院への勤務(いわゆるバイト)もあったりするので、シフトを組むのが大変そう。
少なくとも手術前、バイト前には当直はできませんし、その日働いているメンバーによっては、急な手術の変更が難しいこともでてきそうです。
自分の病院だけであれば、(大抵人数がいるので)問題なく回せる範囲ですが、バイト、特に当直バイトはかなり制限されそうです。
その結果、収入も減ってしまうのは目に見えてますね。
問題点は
- 人員が減る
- 収入が減る
にまとめられそうです。
どうすれば良いのか
で、結局どうすれば良いのか。
人員については、
- 上手くシフトを組む
- シフトが組める程度のバイトに制限する
- 仕事の効率を上げる
- 仕事量を減らす
に尽きますね。今更ですが。
医者を働かせるより事務を働かせる方が人件費は安いので、タスクシフトが進んで欲しいところです。
毎日同じ人、にならないので、良好なチームを作ることも求められますね。
シフトを作るのも大変そうです。まるでパズル。
長時間手術の場合には、夜間対応が必要なことも多いので、こんな感じでシフトを組む必要性も出てきそうです。
収入の減少に関しては、どこまでが許容範囲か、そもそもバイトすることを前提とされているのがどうなのかという問題にもなってくるので……
バイトしなくても子供育てられるくらいの給料くれたら問題ないんだけどね。
それはまた別の話。
とりあえず今浮かぶ問題点を挙げてみました。
今のうちから準備しておかないとてんやわんやで大変なことになる気がする……
コメント
0 件のコメント :
コメントを投稿