教育・研修系の施設ではほぼ必須のJournal club。

新年度で初めてJournal clubの準備をする方もいると思います。
そこで、Journal clubを意識した論文の読み方を紹介します。

Journal clubとは

別名:抄読会。
主に、英語論文を1篇みんなに紹介して共有する場です。
細かい決まりは組織毎にあると思うので、まずは上司や先輩に確認しましょう。

論文を選ぶ

まずは読む論文を選びます。
正直なんでも良いのですが、Journal clubに向いているのは
  • 比較的最近の論文(数年以内に発表されたもの)
  • 臨床試験>>総論、レビュー
  • クリニカルクエスチョンに即している
を満たすものだと思います。
最近よく遭遇する疾患、治療方針の決定になやんだ疾患、珍しい・新しい治療法など、日常診療で疑問に感じていること・もっと知識を深めたいことをテーマにしましょう。
そのテーマについてpubmedなどで検索してAbstractを確認します。
症例報告やレビュー、総論などよりは、臨床試験が読みやすいと思います。
また、あまりに古い論文は「今更?」などと思われてしまうので、数年以内に発表されたものがおすすめです。

初めての頃は、選んだ論文を上司にチェックしてもらいましょう。


発表用のハンドアウトを作る

ハンドアウトの作り方は事前に先輩に確認しておきましょう。
その組織のやり方・テンプレートがあればそちらを優先してください。

論文を読む

まず、Abstractを読んでどんな論文なのかを頭に入れます。
(時間的に余裕があれば、全文目を通しておきます。何度か読んだ方が理解が深まるので。)
大抵直前になって準備をしていると思うので、その場合はハンドアウトを作りながら本文を読みます。
このときに意識するのはPICOです。
PICOとは
  • P:Patients
  • I:Intervention(E:Exposureという説も)
  • C:Comparison
  • O:Outcome
です。この4つが説明できれば論文の内容をほぼ説明したことになります。

話の流れを決める

論文にはストーリーがあります。ただ結果を羅列していくだけでは、何が重要で何が不要かわかりません。
ストーリーに沿って説明することで、「この論文で言いたかったことはこれか」というのが伝わりやすくなります。
論文や学会発表と同じで、「背景」>「方法」>「結果」>「まとめ・結語」の流れが一般的です。

実際に作ってみる

流れに沿って作っていきましょう。

背景(Introduction)

今までわかっていること
わからなくて問題になっていること・知りたいこと
を簡潔にまとめます。ここまでわかってるけど、ここがわからないから、調べるよ、ということです。

Studyについて(Method)

ここでPICOの出番です。
Patients 対象者について。どの疾患を対象にしているか、など。
Intervention/Exposure どういう治療をするか、調査対象者はどんな群か。
Comparison 比較対象について。誰と比較するか。治療するしない、もしくは既存の治療との比較など。
Outcome 何を比較するのか
大抵Primary endpointとSecondary endpointsがあります。Trial開始前に決まっていることがほとんどで、かつ一番「知りたいこと」がPrimary endpointです。

結果(Result)

Primary & secondary endpointsについて説明します。
FigureやTableを順番に並べて説明するのが基本的ですが、情報が多くなりがちなので、あらかじめ大事なところがわかるようにしておくとよいと思います。
また、Journal clubではResultとDiscussionを分けずに、Figureごとに「この結果から言えること」をまとめていくとわかりやすいと思います。

まとめ

結果から何が言えるのか、逆に言えないことはあるか。結果・考察のまとめやLimitationがあれば付け加えます。
最終的には、最初に出た「知りたいこと」が明らかになったかどうか、が結論になります。

論文が説明できれば論文が書ける

Journal clubの準備をしていると、論文の構造に慣れるようになります。
そうすると、自分で論文を書く際に、スムーズに理論を組み立てることができるようになります。
良い論文を書くには良い論文を読むこと、とよく言われます。
Journal clubの準備も面倒くさいと思わずに、自分の糧になると思って準備できると良いですね。