臨床に学会発表にと大忙しの皆さん。

上級医から「じゃあこれ、英語論文にしてみようか」と急に言われてしまった!

英語論文ってどうやって書いたらいいの!?

今回は私の論文執筆方法をご紹介します。

(こんなタイトルの本がありましたが関係はありません。)


論文を書く前に

どうして論文を書くのか

学会発表を終えると、達成感に包まれると思います。数を重ねると、慣れても来るでしょう。
ですが、学会発表をしただけでは、抄録が公開されることはあっても、後の人がその報告をきちんと確認することができません。
せっかく発表する意味のあることを見つけても、それが十分に世界に伝わらないのです。
論文化することで初めて多くの人の役に立つ情報になります。
なので、学会発表をしたら、論文化できないか検討しましょう。些細なものでも意外と大丈夫です。
そして、できたら英語で書きましょう。
小さなものでもコツコツ続けていると業績にもなりますし、お得はいっぱいです。
(これだけ言っていると自分の耳が痛いですが)

投稿先を決める

まず、どこに投稿するかあらかじめ決めておきましょう。
そして、そのジャーナルの投稿規定(Article style and formatなど)を確認しておきましょう。
文字数や図表に制限があったり、構成が決められていたりするので、二度手間にならないためです。

論文作成のハンドブック

私の手元にある本を紹介します。

論文を書くための準備から書き方、さらには投稿の仕方まで掲載。
論文の書き方も構成や文章の作り方まで論理的に説明されている。
シンプルで明快な印象。手元にあると安心感がある。
 

文章の構成パターンや頻出表現に重きを置いている本。
「こなれた表現」で書くには参考になる、けど、最初の取りかかりとしてはちょっと。
何編か書いて、もっと上のジャーナルを狙いたくなってきた人向けかな。
論文の構成については勉強になる。

他にもいろいろありますが、文章の構成については本質的な部分はどれも同じような物だと思います。
作法などもあるので、何かしら一度読んでおいた方がいいと思います。

論文を書いてみよう

論文の構成について

論文の構成も学会発表の構成も大きくは変わりません。
  • Introduction
  • Methods
  • Results
  • Discussion
この流れが基本です。(基礎研究の雑誌によってはMaterial and Methodが最後だったりします)
そもそも学会発表をしているので、流れはできていると思います。
個人的には
  1. 論文の「テーマ」(一番伝えたいこと、主張、目的と結論)を決める
  2. MethodとResultを書く
  3. IntroductionとDiscussionを書く
  4. Abstractを書く
の順に進めていくのがスムーズだと思っています。

論文の流れを作る

Methodは形が決まっていますし、Resultも(主張や結論につながるように)提示していけば良いので、どちらかと言えば単純作業になります。
大変なのはIntroductionとDiscussionです。
文章を書くのが苦手な私はいつも後回しにして時間がかかってしまいます。
そんな私が、なんとか書き上げるためにしているのは、key sentenceで流れを作ることです。
Introductionなら
何についての話か問題点は何かこの論文で何を明らかにするのか
Discussionなら
どういう結果がでたか過去の文献との比較や新規性など、この論文の意義まとめ
とりあえず日本語でもいいので、箇条書きなどで流れを作ります。
その後、それぞれの流れの間を埋めていきます。
つまりshort summaryですね。あらかじめ流れを決めておくことで、話がずれていくことを予防しています。
このサマリーをつなげればAbstractになるはずなんです。はず。

そもそも論文は感想文でも小説でもないですからね。表現力とか要らないですからね。
論理を伝える物なので形に当てはめていけばいいはずなんですよ。

英文を作る

最初から英語で書く

論文を書くにはいい論文をまねするのが一番!とよく言われました。
自分の論文に関連した文献を調べていると、話の流れも参考になります。
個人的には、自分が言いたいことに近い文章を先行論文からいくつか拝借して、それを組み合わせて文章を作っています。
ただ、コピペしすぎると「盗用」と見なされる恐れがありますし、文章のつながりが強引だったりします。
そこで参考になるのが頻出表現のストック。本だったり、webのライフサイエンス辞書のコーパスだったり、シソーラスだったりでこなれた表現を探して、単語を置き換えたり、流れをスムーズにします。
ただ、どうせ後で英文校正に出して、そこで修正されるので、あまり気にしなくて良いよと言われたこともあります。とりあえず書け!

日本語を英語に訳す

私は英語で書きはじめることが多いです。
日本語で完璧に書いてから訳していく方法だと、二度手間になるのと、文章の作りが英語と日本語で異なるので、ネイティブに違和感のある英語ができあがりやすいとされていたからです。
ただ、最近は翻訳ツールも進化しています。中でも代表格2つを紹介します。

DeepL

いわずもがな。登録不要でブラウザでそのまま翻訳できるので便利。
DeepL proにグレードアップするとファイルの翻訳や頻用表現覚えさせたりと便利機能が増える。
普通にお布施感覚で課金したいレベル。

Grammary

これも有名。名前のごとく文法をチェックしてくれる。

論理がきちんとした日本語が書ければDeepLとGrammaryで論文書けちゃう気がするよね。
いい世の中だ。
逆に言えば、日本語でも英語でもきちんとした流れのある文が書けなければ論文にならないので、構成が一番大事なのだと思います。あと、1文を短くするのがコツですね。英語でも日本語でもシンプルな文を繋げていくイメージです。
ま、習うより慣れろ、ですね。
まずは散文でもいいから大事な文章を書いて、その後に流れを意識してつなげていく感じでしょうか。
とにかく不十分でも良いので一度最後まで書き上げてみましょう。

誰かに見せる

煮詰まったら、書き上がったら、誰かに見て貰いましょう。
できれば論文を書くことに慣れていて、その分野にも詳しい上級医が良いですが、双で無くても良いです。
第3者に見て貰うことで、文脈の違和感や、内容の多い・薄いについて評価して貰えます。
より客観的になって、論文っぽさが上がります。
論文の進行状況も他人預かりになって肩の荷もちょっと軽くなるのでおすすめですよ。
見せたまま戻ってこないとか、挙げ句の果てに自分で書いて横取りしちゃうとかいう上司は色々と問題があるので離れた方が良いと思います。(別の問題なので多くは語りません)

英文校正に出す

最近はどうなのか分かりませんが、日本人=英語下手みたいな風潮があります。
英語のJournalに投稿すると、「poor Englishだからnativeに直して貰え」みたいな。
その論文、英文校正してますけどね、みたいな。
いずれにしても最初のうちはきちんと校正してもらった方が良いと思います。
先に述べた、「盗用」を疑われるのを避けることもできますし。
校正先は色々あるので上級医と相談しましょう。お値段も色々なので。



今回は大まかな流れを紹介しました。
具体的なTipsはまた後日!
みなさんも楽しい論文ライフを。