多くの人が悩みを抱える便秘。便秘だけで病院にかかる人もいれば、何かのついでに「便秘で…」と訴える人、そもそも便秘だけど困っていないから、といってそのままの人…
消化器外科医をしていると、排便コントロールはどうしても切っても切り離せない。
いやいや、他人の排便コントロールしている場合じゃないんですけどね。
ということで、今回は便秘のお話でも。きれいじゃなくてすみません。

そもそも便秘とは。
慢性便秘症ガイドライン2017では、
便秘症とは、「排便回数の減少」かつ/または「排便困難を認める場合」を指す
と定義されているようです。まぁそうですね。


この便秘、放っておいていいものではなく、いろいろ悪影響が指摘されているようです。今回はそんな難しい話はやめておきますが、外科医の中には、便秘で腸管穿孔を起こして生死の淵をさまよった人を経験した先生も多いはず…
そもそも老若男女問わずでないものは辛いので、何とかして出したいと思うところです。

やっぱり水分・適度な運動・食事は大切と思います。
しっかり水分を取って、体をよく動かして、よく噛んで食事をとる。ただ過ぎたるは~ということわざがあるように、度が過ぎるのはよくありません。水をいくら飲んでも元気な人もいるようですが、水分や電解質の調整機能が落ちている人では心臓や腎臓に負担がかかります。また、「食物繊維がいい」と言われますが、繊維質のもの「ばかり」では、逆に腸の中で詰まって腸閉塞の原因となることもあります。バランスよく食べることが大事です。

ここでもう一つ、手軽にできて効果が期待できる方法があります。
それは「排便姿勢」です。
実は、和式便器は排便に適した姿勢といわれています。具体的には、前屈み35度、です。
しかし、多くの家で様式便座が普及している中、和式に戻すのも抵抗が強いことでしょう。
ここでおススメなのが、踏み台です。
便座の前に、15-20cm程度の踏み台を置いて、その上に足を乗せることで、手軽に前屈みを作ることができます。
個人的にはまず試していただきたいライフハックです。

癖がつくとなかなか治らない便秘。
するりと出る習慣がついてしまえば薬から卒業できます。食後にトイレに行き、排便がある、という習慣ができるように、時間に余裕があるのも大切かもしれません。
ただし!便秘の中には悪性腫瘍など重要な疾患が隠れていることがあります。定期検診を受けたり、例えば数年でお通じの様子が変わったなどあれば、早めに医療機関を受診し相談しましょう。40歳を越えたら一度は大腸カメラ、とおすすめしています(もちろん便秘を含めた症状がある場合ですが)。

ちなみに、ここからは医療関係者向け。
どの科でも「便秘の薬ください」と看護師さんや患者さんに言われていることと思います。
基本は、「刺激性下剤」は屯用、です。
入院などで生活習慣が変わったなど、ストレスで一時的に出ないのであればセンノシド、ピコスルファートNaなどでいいと思いますが、継続使用はあまり好まれません。
慢性便秘症には、浸透圧性下剤や最近の新しい薬たちを試していただければと思います。
詳しくはガイドラインや下に挙げる参考図書をご覧ください。
1冊あると便利ですよ。

この記事はこちらの本を参考にしています